30年来のお付き合いのある「福祉サークル コスモス(以下、コスモス)」と当団は、車イス体験集会などにお招きいただき、車イスに乗って買い物に行く体験やボッチャ体験などをさせてもらってきました。そのコスモスのメンバーである宇田川温子さんがパラリンピックボランティアを体験され、報告してくださる機会を得て、今回、小学生ガールスカウトたちが司会をつとめる報告会を会場とオンラインのハイブリッド開催をすることとなりました。

宇田川温子さんのお話し

ブラウニー(小学低学年)部門リーダーのリポート

ご自身の障がいについて

7歳の時に若年性関節リウマチを発症し、16歳から車イス生活になられた宇田川さん。福祉サークル コスモス、宮古島でスキューバダイビングに、選手村ボランティアにと精力的に活動にされています。
関節が壊れたり溶けてくっついたりと、骨が曲がったまま固まってしまう病気のため、立てず歩けない病気です。介護保険制度で、ヘルパーさんに来てもらったり、リハビリをしたりし、自分でできることは自分でできるよう工夫しながら、一人暮らしをされています。リハビリを受けて体の機能を維持しているそうです。

移動と車イス

現在、東京都のバスは運転手さんが介助して当たり前に利用でき、地下鉄の利用も出発駅で乗換駅などの経路と車両番号とドアの位置を伝えれば、行く先々で駅員さんが介助してくれるようになっていて、電車でもどこへでも行けるようになったそうです。タクシーだけは、リフト付きの介護タクシーを予約しなくてはならないと聞き、車イス利用者のためにせっかく導入したUD(ユニバーサルデザイン)タクシーが利用できていない現実を残念に思いました。介護タクシーは身体障害者制度で利用しているそうです。

車イスには、いろいろなタイプがあり、それぞれの障がいに合わせて作られています。宇田川さんの場合は、自宅用と外出用は作りが違っていました。

オリンピック・パラリンピックのボランティアの体験

ボランティアをやってみようと思われた理由は、自分が住んでいる東京に世界規模のイベントが来るのであれば、携わって世界各国の人と交流したい。そして、世界的な大会なので安心して障がい者でもボランティアができる仕組みがあるのではないかと思ったそうです。実際は、今回の東京大会が障がい者によるボランティア参加は初の取り組みだったそう。
2018年に申し込んでから、説明会やユニフォームの受け取り、研修会、ワクチンの接種など、東京のいろいろな場所(不便な場所も多い)に行かなければならず、車イスでの移動は大変で友人の支援を受けて準備を進めたそうです。選手村への配属も決まっていましたが、新型コロナウイルスまん延による緊急事態宣言、そして、延期。対面で行われる予定だった研修はすべてオンラインに。そして、迎えた本番では、パラリンピックだけでなく、オリンピックの期間も合わせて、8日間あったシフトのうち、爆発的感染数を考慮して4日間参加。選手が利用した備品チェックや部屋への誘導、ホテルフロントのような受付対応、スポーツジムの受付とレクリエーション室での対応を担当されました。レクリエーション室では、ボッチャで選手たちと交流をすることができて楽しかったそうです。

宇田川さんからのメッセージ

あきらめずに、一歩でも進めれば、私のようにボランティア活動することができたので、みんなもあきらめずチャレンジしてほしい。という言葉がとても印象的でした。

道見美由紀さんのお話し

ジュニア(小学高学年)部門リーダーのレポート

道見さんが手話をして通訳者二人が交代で言葉にして伝えていただいたものをまとめました。

盲ろうとは

盲ろう者とは、視覚障害と聴覚障害を併せ持った人のことです。

  • 全盲…全く見えない
  • 弱視…少し見える
  • 視野狭窄…真ん中の狭い範囲だけ見える
  • 中心暗点…真ん中の部分が見えない
  • 白濁…全体に白く濁っている
  • ろう…音が入っても聞き分けが難しい、聞こえない
  • 難聴…少し聞こえる

道見さんは弱視ろうで、見え方は視野狭窄と白濁を併せ持っています。 耳は生後、高熱が続き、3歳のときに聞こえないことが判明、眼は小学4年時に人にぶつかったり転んだりすることが多く、網膜色素変性症と知りました。

コミュニケーション法

  • 指点字…相手の手を自分の手の指を重ねるように、点字を置き換えて打つ
  • 点字筆記…機械で点字を打ち出す
  • 触手話…手話を手で触って読み取る
  • 接近手話(弱視手話)…近くに行って手話をする
  • 筆談…紙に書く
  • 手書き文字…手のひらに文字を書く
  • 指文字…五十音の指文字を手のひらに当てて読み取る

困難

盲ろう者は、全国に約2万人、東京に約2千人程度いるが、道見さんは50人くらいしか会いません。一人で外出が難しいのでひきこもる人が多く、情報が届きにくいです。
道見さんは少し見えるので、昼間は一人で出かけられますが、夜暗い時や初めて行く場所、人の多いところは介助者と一緒に行きます。

パラリンピックボランティア

オリンピックが好きで、車椅子などの障害者でもボランティアができると知り申し込みました。一人では不安だったので、面接のとき、交渉し、通訳介助者と一緒に認めてもらえました。

パラリンピックオフィスに配属され、本人確認作業や配布作業をしました。スタッフが筆談ボードを準備したり、パソコンの文字やマウスポインターを拡大したり、色も白から黒にしてもらったりと、基本的な作業は一人でできるようにしました。

ジェスチャーで答えてもらえる様ボードを作ったのですが、普通に話しかけてくる人が多く、スタッフが対応することが多かったです。

挨拶代わりにバッジを交換する伝統があり、視覚障害者向けのピンバッチは触ると凹凸があってとても人気があり嬉しかったです。わたしもたくさん集めました。

道見さんのコレクション

感想

通訳介助者を通じて話しかけてくる人が多く、何のために参加したか疑問に思いました。ボランティア担当者からの話しでは、障害者の募集は初めてで、種類も色々あり配置にとても悩んだとのことでした。コロナは不安でしたが、検温消毒 PCR 検査をきちんとやっており、 ワクチンも打ち安心して参加できました。 今回、障がい者も健常者も共に活動ができ先進になったと思います。

道見さんからのメッセージ

盲ろう者の人で生活に支障を感じている人を見かけたら、盲ろう者協会の紹介、または、協会へ相談してください。通訳介助者は高齢化しており、できたら、若者が通訳介助活動に参加してほしいです。

ガールスカウトのひとりが報告会のあと、道見さんが夜は出歩かないと聞いたことから、「これから冬になると昼間が短くなるから困るのかなぁ」とリーダーに聞いてくれました。障がいを持って暮らす人々の気持ちに寄り添って考えられる気持ちをはぐくむ良い報告会になりました。

登壇者のお二人へ改めて感謝の気持ちでいっぱいです。そして、私たちはこれからも、福祉サークル コスモスとの交流を続けていきます。